2008年10月14日火曜日

私の外車人生の原点  BMW 745iA (E23)

私の今までの外車人生の中で、思い出に残るモデルは多々ある。そして、その中でも、人生初の外車というのは、後の外車生活に、大きな影響を与える。 私の外車人生のはじまりは、先々々代のBMWの7シリーズ、E23の745iAである。この車はわたくしの外車人生の原点でもある。今は、もう手元にないこの車のことを思い出してみることにする。



私が、人生はじめて自分で購入した車は、三菱のディアマンテという、当時一世を風靡したセダンであった。BMWのようなフロントマスク、ジャガーのような広告、、、当時、平成二年というと、バブル華やかりし頃ではあったが、新入社員がいきなり3ナンバーなど購入するというのは、もっての外で、ずいぶんといじめられたものだ。
この車は、買い物に、デートに、旅行にとさんざん活躍し、いい思い出も、嫌な思い出も、沢山ある。そのディアマンテにも、およそ2年乗ったのだが、ある日突然、外車雑誌の片隅の掲載してある、「1984年式 BMW745ia シルバー、アイボリーの革の内装、75000km」という物件を発見した。



このE23の745iAは、私が学生時代、大学の近くのあるお宅に停まっており、そのスタイルに魅了され、いつか、こういう車を自分で所有してみたいと、熱望していたモデルである。当時、BMWの最高峰に位置し、若造にはとても近寄りがたいオーラを放っていたことを今でも鮮烈に思い出す。

「歴代のBMWの中で、最も美しいモデルは何か」という問いに対しては、、多くが「E24 通称6シリーズ」と答えるだろう。その、黄金律のようなボディの構成比と、ドイツ流うの幾何学的な内装のデザイン、そして伝統のシルキーシックス、、、BMWのイメージリーダーとして、これほど似合う車はない。

しかし、私は、この6シリーズの4ドア版である、E23の7シリーズ、とりわけッファローレザー張りの特別な内装を奢られた、745iAというモデルに並々ならぬ関心を持っていた。

次の週末、早速、品川の旗の台にある、○島モータース(今は倒産したようだが)に、現車を見に行き、舞い上がっていたので、ろくすっぽ試乗もせず、即決してしまった。

今ならば、車のコンディションも、まだ冷静に判断できるし、価格の交渉も上手に出来ると思うが、当時の私はあまりに無力だった。結論から言うと、この745iAはハズレだったのである。

まず、エアコンが故障していた。確認しようにも、冬だったので分からなかったのだ。ステアリングのガタがひどく、これはステアリング・ギアボックスの問題ではなく、ロアアームのブッシュが完全にヘタっていたからだと思うが、そんな知識はなかった。

そして、何よりも、ステアリングが異常に重かった。お店の人からは、「こんなもんですよ。ポルシェなんかもっとひどいですよ」と言われた。私は、この車を平成5年から平成8年までおよそ三年間保有することになる。当時は給料も安かったので、整備費用が捻出できず、常に調子が悪かった。結局、エアコンは一度として効かず、ステアリングは重いままだった。

今のように、インターネットが普及しておらず、外車の整備情報などは、正規ディーラーしか持っていなかった。良心的な整備工場も少なかった。女性もこの車には乗りたがらなかった。

結局、この車は、購入金額以上の整備代金をかけ、全塗装まで施したが、E32 750iLを衝動買いしてしまったので、別れを告げることにした。※この750iLも駄目車だった。


私は、この二台のBMWの苦い経験で、「元が悪いものは何やっても駄目」「中古車屋は信用できない」という結論に達した。その後、私の中古車人生は、「個人売買、低走行の極上車」という路線にシフトすることになった。

すでに、世の中はインターネットが爆発的に普及し、ISDN回線で快適な通信環境も整備されつつあった。ヤフーオークションで個人売買を行い、自分で陸運で名義変更し、部品も海外から直接購入して、工場に持ち込んで整備する。

私は、自動車の個人売買に夢中になった。遠くは九州や北陸までにも飛行機に乗って下見に行き、その帰りにフェリーで乗って帰るというような荒業も相当こなした。

中古車屋の云う「距離よりも程度」というのが如何に嘘かというのは、自分で経験してみて良く分る。
「低走行、極上車」は、購入するときにはやや値が張るものの、追加の整備費用があまりかからず、次に自分が売る時にも非常に有利であると思い知った。確かに距離の出ている車でも程度のいいのはあるかもしれないが、やはり、「低走行、極上車」には、かなわない。

2001年の4月に、1983年式、走行距離 たったの5800kmという、W126の500SELをオークションで購入し、あの時代の、新車のドイツ車の良さを思い知った。自分が今まで乗っていたのは、ただの屑だったのだ。
そして、2001年の秋、私のとって、運命の出会いがあった。程度極上のE23 745iAが出品されていたのである。しかも値段は格安であった。1985年式 D車、1オーナー、距離25000km、色はグラニット・シルバーで、内装は、探し求めていたバッファローレザー!!記録簿完備、整備はすべてディーラー(BMW高輪)

今までの自分の意味のない苦労を、この車が救ってくれるような気がした。

私は、夢中で入札し、そして週末には、出品地である和歌山に飛んで、無事に受け渡しを済ませた。私は、帰りの高速道路で、最初の745iAとのあまりの違いに、愕然とした。「今までの私の苦労はなんだったんだ、、、じめにこの車に出会っていれば、、、」

その後、この745iAには、微細なトラブルもあったが、ほとんど完璧といってもよい状態で乗ることができた。やはり、エアコンが途中で逝ってしまったが、原因であるコンピューターは、埼玉のイースト電機で完治した。納車後、今までよりも、はるかに強い風量で冷気が出て来た時には、心の底から感動したのである。
その後、ブレーキのマスターシリンダーの交換、ブレーキキャリパーのOH、などをしたくらいで、ほとんど故障らしい故障は無い。今思えば、パワーステアリングのポンプから、パワステオイルが漏れていたので、OHかリビルド品に交換するなりしておけば、ステアリングの重さも解消できたのではないかと思う。
この車も、都合5年間、私の手元にあったが、持ち駒の出入りの関係で、どういうわけか魔がさしてしまい、この745iAを売ってしまった。今思えば痛恨の極みである。もう程度の良い745、、しかもエクゼクティブ仕様などは、市場にはまず出回らない。今でも、もしかしてどこかで程度のよい745iAが売られているのではないかと、気になってしようがないのだ。

0 件のコメント: