2014年1月18日土曜日

在りし日のX305 ダイムラー・ダブルシックス


私は過去にシリーズⅢのダブルシックスを2台、X305のダブルシックスを1台保有した経験がある。しかし、自分で維持管理して極上化を目指した経験は殆ど無い。それは車の出来そのものよりも、私とジャガー(ダイムラー)というメーカーの相性や、当時の私の成熟度が足らなかったのではないかと今更ながら思うことがある。

古い画像を整理していたら、5年ほど前に鎌倉に住んでいたころに撮影したDD6の写真が出てきた。この車は、福岡の業者からクリック一発で購入した物件。走行も少なく内装の程度もかなりよかったのでしばらく乗るつもりであったが、縁があって学校法人デビル学園の理事長であるわんこ氏にお譲りする事になった。

当時、わんこ氏は同タイプのジャガーのソブリンの極上化プロジェクトに邁進しておられ、同機種の二台持ちというマニア垂涎の世界に突入されたが、両車を比較してそれぞれの悪い部分が気になり、何度も修理を試みるが、ますます理想が高くなってしまい悩みも増えてしまうという無間地獄に陥ってしまわれたようである。そしてDD6は専門工場や正規ディーラーにおいて徹底的な整備が行われ、わんこ氏の手元にてファーストカーとしての役目を果たしているのである。

生粋の車マニアのわんこ氏をしてそこまで熱狂させるX305 DD6の魅力とはなんだろうか?
また、この車が誕生してもう20年になるが、現代の価値観でこのモデルを所有するとは一体どういう行為なのだろうか。

このスタイルはもはや現代の車には無い。もし、どこかのリゾートホテルの玄関に停まっているとして、これほど絵になる車は無い。こればかりは、唯一無二の存在だ。
 この複雑な造形は、現代の車造りでは絶対にやらないであろう。

 内装も本当に趣味がよい。ロールス&ベントレーのインテリアの素材や作りこみは異次元であるが、こちらは英語で言う「Cozy」(居心地がよい)という表現がぴったりだ。
 小ぶりなシートは最後まで私には合わなかったが、これはスポーツカーなのだと教えられて納得。



今、もし私がこのモデルを買い直すとするとどういうアプローチを行うだろうか、、

業者オークションではX305のDD6はかなり安い価格で取引されている。ちなみに、昨年の11月にUSSでこの96年式 1.4万kmのセンテナリーが655000円で落札されている。三年目の車検時からきちんと記録簿があり、整備手帳なども完備していることから、相当な極上物件だと思われる。内装はCとあるが、天井のたれなどは簡単に直せるので問題は無い。これくらいの大波物件は、年に三回くらいはあるのだが、常にウォッチしていなければ、見逃してしまうだろう。



さすがに、色艶が違う。屋内保管ではないとこの感じは出ない。
リアからの眺めも綺麗。蛍光灯の下に来ると水垢(イオンデポジット)が目立つが、かなり綺麗。
内装はパーフェクト。この綺麗さは特筆物。二、三年に一回のレベルだ。これが65万なんて。。このムートンのカーペットの状態を見よ!


これは、昨年の12月のUSS 札幌の95年式のDD6であるが、落札価格は123000円。内外装はそこそこであるが、天井が垂れているので内装はCである。

 写真で見る限り、特に問題はなさそう。。


やはり、内装は結構汚れており、これは一度本格的にルームクリーニングを行う必要がある。皮革そのものにはダメージが少ないのならば、素材としてはまあまあではないか。


X305 DD6の良さはこれからもますます見直されていくことでしょう。所謂「名車」としての殿堂入りを果たすのではないか。と言ってもマニアの中だけですが、、、、(笑)

90年代以前のアナログな良さを持っている車の多くは、もはやコンディションが悪化して、維持コストには多額の資金と情熱を要し、この年代のベンツやBMWは本当によく壊れる。

しかし、世の風評に反して、この年代のジャガーはあまり壊れない。特に、X305はフォードのグローバル戦略の中で開発された車なので、シリーズⅢ時代のような部品そのもののクオリティに由来する故障やトラブルシューティングそのものが困難というような厄介さは無いのでしょう。

現在、1990年代の車で趣味車として価格、性能、趣味性、維持コストなどを総合的に勘案して選ぶとなると、候補は相当に限られてくる。大本命はやはり往年のベンツになるのでしょうが、W124にしてもW140にしても、現在の基準で評価すると、やはり古いとしか言いようが無い。そしてシャキッとさせるのに結構お金がかかります。お金さえあれば、ベンツは新しいほうが絶対に良いです。

確かに、X305のDD6は、技術的には遅れていますし、燃費も最悪です。ボディも緩いし、高速道路もあまり得意ではない。鷹揚なサスペンション、緩いボディ、狭い居室、排気量の割にはたいしたこと無いエンジン、非効率的なオートマティックトランスミッション、何から何まで古いのだ。しかし、この古さとは、昨今の自動車メーカーが安全性、燃費、生産性、グローバリズムの代わりに失ってしまった「良さ」でもある。

もし、この車を現在購入し、維持するだけの価値があるとするならば、まず第一はやはりそのスタイルの良さであろう。現在のX305のDD6を街で見かけることは殆ど無い。しかし、このスタイルは街の風景を一変させるだけの魅力がある。そして、X305の乗り味を維持するにはかなりの予算がかかるのだが、その面からはやはり上記の1.4万kmのセンテナリーのような極上車を買うのが結局は安くつくし、希少価値からも数年後の価値も残るであろう。

また、素材としてそこそこの固体を入手して、自らメンテナンスをするのであれば、これはこれで楽しいくるま道楽となるであろう。幸い、X305シリーズは20年以上が経った車であるので、維持コストもそこそこかかるであおるが、熱狂的なマニアの存在で様々なトラブルについても、FAQが見つかると思う。通常の整備であれば、国産ディーラーや外車の得意な整備工場ならば、簡単にやってくれるだろう。ただ、ドイツ車のような海外からの安価なOEM部品や中古部品が少ないので、パーツ代はそこそこかかると思っておくべきであろう。直輸入するにしても、このポンド高では、かつてほどのメリットは無いと思われる。

いずれにしても、X305 DD6 私が今最も気になる車の一つである。

6 件のコメント:

satoru さんのコメント...

しばらく拝見していなかったら大変な展開になっていて大喜びしております(笑)。しかし昨年そんな大波物件が出ていたのですね。知りませんでした。

Felipe 四世 さんのコメント...

Satoruさま、このセンテナリーは大変な大波です。もし気づいていたら、危うく自動売買プログラムが作動しているところでした。さらに、都知事選もビックリの後出しじゃんけんで、DD6の保有者の皆様からひんしゅくを買うところでしたわ。

Unknown さんのコメント...

ステキな記事をありがとうございます。
私が購入させてもらう前のDD6の写真を
拝見し 思わず惚れ直してしまいました。

おっしゃるとおり、機械としては古いです
が、訴えかけてくる世界は大変色濃いです。
ゆっくり走って心地よく、大きさもコンパ
クトで使い易いところが気に入っています。

ところでセンテナリー 自動売買プログラム
を作動させて欲しかったです。
マウント類は全て交換になると思いますが。

Felipe 四世 さんのコメント...

Wankoさん、コメント有り難うございます!あのセンテナリーは買い逃しました!

Wankoさんのダブルシックスは、もはややるべき課題はほとんどなくなったのではないかと思いますが、新しい車はどんどん進化していきますから、ますますX305の世界は貴重なものになっていくと思います。

やはり、ドイツ車ばっかりですと、自分の心が狭くなってしまいますね。

私は、VolvoのXC70でフロントのアーム関係一式と、サブフレームマウント、エンジンマウントを総交換しましたが、非常に快適ですよ!devil基準でもいいところまで行ったと思います!

Unknown さんのコメント...

ボルボのリペアは費用がかかったとおもいますが、車の足回りを本格的にリペアされて得られた
効果も実感されたと思います。
でも 思いの外変わらないこともあるんですよね(^^;)

W140の600SELを本格的に整備して感じたのは、本来の車の性能です。
200km/hは出しませんがそこからのフルブレーキを3回行うとフェードしてしまうのです。
設計の脆弱さが如実に感じられました。
抜群のエンジンに素晴らしいステアリングフィールがありながら。
それに対して今お持ちのCLはそんな初歩的な
苦労がないと思われます。
本当に良い車を持たれていると思います。

私はX305をフルにOHして新車に近い?と
感じるほどの効果を得られましたが 今乗って
いると正直新しい車との差を改めて感じ
させられます。

オーナーがどんな車を求めるか?で評価は
変わると思いますが、私は正直唯物論的
評価が素直で、E66をお持ちのオーナー様が羨ましいです。

どうぞご自身に素直に納得の行く車選び、
楽しい車遊びを邁進していただきたいと
思っています。

フルOHしたX305に乗ってもらいたいです。
正直 ボロいです。
でも 美人でとても愛おしいのです。

Felipe 四世 さんのコメント...

是非とも、フルリペアしたX305を体験してみたいです!また関東、北陸、関西の中間地点で合宿しましょう!

いつの間にか、街中でジャガーを見る事が少なくなってきました。X305やX308のオーナーは、今はAudiやレクサスに乗り換えてしまったのかもしれません。

もはや、色んな意味で古いダブルシックスですが、運転する喜びも高く、人の目を惹く車なんてなかなか有りません。

寂しい事に、世の中のエコロジー志向(補助金頼み)が、このような車を葬ろうとしていますが、それを維持するのが文化ではないでしょうか。