2008年9月4日木曜日

六本木はアートの都になれるか??

今日は暑い一日でした。やや遅い夏休みの最後の日、ふと思い立って、六本木にある国立新美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画のに行ってきました。展覧会の目玉は、スペイン絵画の巨匠ディエゴ・ベラスケスの描いた「薔薇色の衣裳のマルガリータ王女」(1653-54年頃)です。 でも、なんでスペインの王女様の肖像画がウイーンなどにあるんでしょう?それを知ることは、欧州の近代史を知ることでもあります。










































時は17世紀、ハプスブルグ家はオーストリアとスペインに分かれ、互いに、政略結婚を繰り返しながら、全欧州で勢力を拡大していました。しかし、スペインでは、悪政が続き、また後継ぎの王子たちは皆早く亡くなったので、王朝は存亡の危機に瀕していました。スペイン王朝が生き永らえるためには、なんとしてでも、有力な王族との政略結婚を成功させなければなりません。そこで、14歳になった、マルガリータ王女は従兄でもあるウイーンの神聖ローマ帝国皇帝 レオポルド1世に嫁ぐことに。
これらの肖像画は、幼くしてレオポルド一世と婚約した、マルガリータのいわばお見合い写真でもあるのです。 ベラスケスは、マルガリータの肖像画を6枚描きました。それらのうち数枚がウイーンに送られ、そのうちの一枚が、この展覧会のために、はるばる日本にやってきたのです。
ちなみに、この国立新美術館、サントリー美術館森美術館を六本木三大美術館というそうですが、共通点は自前の美術品を所蔵せず、さまざまなテーマで、展覧会を開くという、いわば美術界の「カンバンシステム」とでもいうべき、在庫を持たず、旬のネタをジャストインタイムで仕入れる仕組みにあります。
さらに、これら三つは、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンなどに隣接しているのも特徴のひとつ。ビジネス、ホテル、レジデンス、ファッション、高級レストラン、そしてアートを組み入れることで、都市としての魅力を高めようという狙いでしょう。
NY,ロンドン、パリのような先端都市にはアートは必要不可欠ですから、東京の再開発の一つのひな形としてみると、なかなか理にかなったやり方と思いますね。













































この肖像画は(ベラスケスの描いたものではない)、マルガリータが16歳のころのもの。父フェエリペ四世の葬儀の時に描かれたといわれています。本当に悲しそうな顔をしていますね.
彼女は、レオポルド一世との間に四人の子を産みますが、一人を除いてすべて早死。マルガリータ自身も、22歳の若さでこの世を去った。その後、スペインは英国、オランダにその栄華を明け渡し、没落していくことになります。




この絵は、スペインのプラド美術館にある、ベラスケス最大にして不朽の名作『ラス・メニーナス(女官たち)』

中央には自身の姿を巨大な鏡に映す皇女マルガリータとその女官たちが描かれ、画面左側ではベラスケス本人と推測される画家が筆を手にしながら観る者と視線を交わらせ、この光景を描いている。そして、画面最奥の鏡には国王フェリペ4世と女王マリアーナが映っています。










































この絵を見る者は、国王夫妻と同じ視線で、この光景を観るのですが、主人公は、あたかもマルガリータであるように見えて、左側のベラスケスの強烈な自意識もうかがえ、非常に興味深い絵画であります。当時、画家という職業には「職人」としての地位しか認められていませんでしたが、フェリペ4世は晩年のベラスケスに宮廷装飾の責任者を命じ、貴族、王の側近としての地位を与えていました。

画中のベラスケスの黒い衣服の胸には赤い十字の紋章が描かれていますが、これは、サンティアゴ騎士団の紋章で、ベラスケスが国王の特段のはからいで同騎士団への加入を果たし、貴族に列した1659年(死の前年)に描き加えられたものです。ベラスケス自身も、宮廷画家にとどまらず、政略結婚の根回し役を努めていたぐらいだから、相当な曲者だったのは想像に難くない。(※これが原因で過労死したとの説あり)

技術的には、カラヴァッジオやオランダ海外の巨匠達の影響を受けた、明暗対比(陰影法)による写実性豊かな描写手法を用いながら、当時の王室の生活のひとコマを、見事に計算された構図で表現した本作は、古典絵画の傑作として、今なお人々を魅了し続けています。

この日は、サントリー美術館の「小袖 江戸のオートクチュール」という、展覧会を見てきましたが、着物には何の興味もないので、10分で退出。その後、ミッドタウンの中をぐるりと一周し、JEAN-PAUL HEVINでショコラを購入して帰路につきました。

そこで、今回のテーマ「六本木はアートの都になれるか??」というテーマに関しては、Noと言わざるを得ない。国立新美術館も、当初は「ナショナルギャラリー」という名前であったようですが、それでは海外からの旅行者に誤解を招くという美術関係者からの猛反対にあって、今の名称に落ち着いたようです。(ちなみに英語表記ではThe National Art Center, Tokyo となっています)

欧米の一級都市にあるようなナショナルギャラリーを、今の日本でゼロから作るのは、限りなく不可能に近い。であれば、これらの美術館のような仕組みで、運営していくほうが、観る側からすれば、良質なものが見れるのではないかという気もします。そう考えれば、国立新美術館も、東京ミッドタウンの一部だと考えれば、納得がいく。二階には、ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼも入っていますしね。

まあ、非常に人工的かつ、高度消費社会のメッカのような場所で観た、ベラスケスのマルガリータは、そんなへ理屈は、まったくお構いなしに、そこにありました。9月15日までこの展覧会は開催されています。

PS:ミッドタウン地下駐車上からのエレベーターで、森進一氏と乗り合わせました。思ったより小さい方でした。あの声で「何階ですか?」と親切にボタンを押してくれました。好印象です。

1 件のコメント:

Felipe 四世 さんのコメント...

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