2015年2月10日火曜日

W140は永遠に、、、94年式 2.4万kmの極上の500CLを購入する


ノスタルジアは郷愁と訳されますが、その原義は、ラテン語で『古傷の痛み』というらしく、単なる思い出だけではなく、心のうずきが伴います。

アメリカの50年代を舞台に広告代理店を舞台とした人間ドラマ「マッドメン」で、主人公がコダックの回転式の写真映写機「カルーセル」をクライアントにプレゼンする場面で、このような台詞があります。




確かに派手な技術は消費者の目を引きます。
しかし、それ以上に消費者の心を揺さぶるのが、製品に対する特別な愛着です。

最初の職場の毛皮会社に、テディというコピーライターがいました。
彼いわくまず広告に欠かせないのは、目新しさとニーズを想起させる要素。

そして製品は自然と消費者の家に収まる。
何が製品への深い愛着につながるのか。

たとえばノスタルジア。それは繊細で、強い想いです。
テディは言いました。「ノスタルジアの元来の意味は『古傷の痛み』」

それは記憶を圧倒するほど力強い心のうずきです。

この機械は宇宙船ではなく、タイムマシンです。時間を戻したり進めたりして、
戻りたいと渇望する場所へ連れて行ってくれます。


「車輪」というより「回転木馬」です。子供がする冒険にも似ています。

ぐるぐる回って必ず家に戻ります。自分が愛される場所へと。


12年前に、初めてW140を買った時、それまで乗っていたW126とのあまりの違いに、心の底から驚きました。それから10年以上、私のファーストカーとして、活躍してくれましたが、トランスミッションの些細なトラブルで、修理工場を二転三転し、結果的にはキックダウンスイッチの交換で2万円で完全に治りましたが、私の関心は徐々に冷めていきました。


昨年売却した時も、この600SELは1万キロ台のノーマル仕様でしたが、最後の2年くらいはメンテナンスが行き届かず外装もかなり痛んでおりました。AMGS600Lもほぼ同時に売却して、二台整理したときは、心の底から気が楽になったことを覚えています。

しかし、走らせると、あの鷹揚な足廻り、すばらしいエンジン、ガッチリとした駆動系の感覚は、やはりベンツ濃度は高く、売るのを躊躇った事を記憶しています。

昨年末に売却したR129-500 SLも、25年前の車と思えない先進性、動力性能、そしてその後のモデルからは失われてしまった本物のクオリティがありました。



先月、何気なくヤフオクをウォッチしていたら、94年式の500CL 2.4万kmという極上物件が出品されておりました。しかも色は希少なパールブルーというもの。ベンツの大型クーペにはよく似合う色です。あいにく、その車は落札されずに終わりましたが、出品者と連絡を取り、次の週末に別件で東京に用事があったので、その足で見学、試乗して気に入ったら買って乗って帰ると伝えました。

出品者によると、初代オーナーは屋内保管の為に内外装の程度は抜群とのこと。走行1.2万kmで購入ししばらく乗ったが、事情で一時抹消を行い三年間は不動状態にあった。しかし、昨年の夏に一念発起し新たに車検を取り直してみたが、仕事で海外に行くことになり、家族の意見もあって売却する事になったそうだ。前回の車検時に、相当な整備を行っており、エアコンのコンプレッサー、ブレーキマスターシリンダー、ウインドウレギュレーター、燃料ポンプ、燃料フィルターなどを交換しているとのこと。

W215が空前のバーゲンプライスで買える時代、あえて何故W140?しかもクーペ?

私自身、まともにW140に乗るのは3年振りくらいです。しかも、ノーマルの600SELはもっとご無沙汰。街でW140を見かけることはもうほとんど有りません。ましてや、クーペなぞ見たことすら無い。

もちろん、程度、走行距離、内外装のカラー、などは最後の決め手になりますが、W215とは役者が違うという事実を確認したかったからかもしれない。

現在、CL600と760Liでかなり楽をしていますので、何か物足りない気がしていたのは事実です。


肝心の走りは、もはや現代の価値観では評価不可能なのか?または、適切にメンテナンスされた極上のW140は未だに感動を与えてくれるのか?頭で考えると、思考停止に陥りますが、実際に走行2万キロの物件とはどんなものなのだろうか?



では、恐る恐る試乗してみます。ドアを開けていきなりあまりの重さにびっくり。W215とは車格が違いました。。そして運転席に乗り込むと後席からするするとシートベルトのガイドが伸びてきます。これは、W126のクーペモデルを思いだしますね。

アクセルを踏み込むと、??前に出ない。あっそうだった。この年代のベンツはアクセルの遊びがあり、少し踏み込む必要があるのを思い出しました。そろりそろりと加速していくと、一気に過去の感覚が蘇ってきます。まさにこの時代のベンツそのもの。深いストローク、実用域では万事控えめなエンジン、そして路面感覚をありのままに伝えるボールアンドナット式のステアリング、完璧なAT、そして内装の作りこみはW215とは別世界で、W140というよりも素材や意匠などはW126に近い。


この広大なトランクルームを見よ。使用感の少なさが購買意欲を掻き立てます。
後席は殆ど使用した感じはありません。乗り降りは不便だが、なかなか広い。
 それと、私の趣味であるDIYカーオーディオのベースとして、W140クーペは、3wayのスピーカーをインストールして、ドアの内部にバスレフ型のエンクロージャーを入れたいとか、、妄想しています。
見よ、実走行で2万4千km。奇跡のコンディションなのだ。。。

さて、大阪まで500キロを高速道路で運転したインプレッション。

結論から申し上げますと、我々が現実的に購入しかつ維持可能な旧世代のベンツの中で、W140クーペは、セダンを単にかっこよく2ドアにした車では無く、贅沢の極みでありました。

特に印象深かったのは、ステアリングギアボックスの超絶ななめらかさと剛性感。これだけは、もう次元が違う。これを味わうために運転する価値があると思わされるくらいです。

機械式のオートマチックトランスミッションの変速も極めて滑らか。本当に素晴らしいです。

内外装の立て付けにおいては、もはや別格と言ってもよいでしょう。140セダンよりも使われている素材や様々な意匠が凝っています。

大阪に帰ってから、小一時間ほどBMWの760にも乗りましたが、140クーペのあまりのベンツ濃度に、拍子抜けしました。

今回の個体は、希少な外装色、2万4,000キロの走行距離内外装のダメージの少なさ、など感情移入するには十分な要素が大いにあり、今後の私のメインカーとして、活躍してくれることになりそうです。

正直に申しまして、W140にここまで感情を揺り動かされるとは思ってもみませんでした。単なるノスタルジーに過ぎないと思っていたのは、大きな誤算でした。

9 件のコメント:

meitei さんのコメント...

このブルーは良い色ですね。パーソナルなクーペに相応しいと思います。

なんだか都内/首都圏で見るベンツは〝白〟ばっかりで、寂しいです。カタログ上は素敵な外装色が揃っているのに、何故に白を選ぶのか不思議。新車ディーラーが面倒くさがって、無難な白を強力にプッシュしてるのかも知れないですね。そう言えば、W204の新車購入時は、事実上、白黒銀しか選べなかった・・・

Felipe 四世 さんのコメント...

Meiteiさん、コメントありがとうございます。この車を選んだ決め手はやはり色でした。内装が明るい色だったら最高でしたが。
乗ってみると、セダンとはかなり違うのでビックリしましたよ。
ベンツは、CLという呼称を廃止して、新しい呼び名を与えるようです。CLとCLKと混同されるからかもですね。

Unknown さんのコメント...

うちに昔、190Eがありましたが、小型な車でも重厚な操作感はさすがベンツ、
と思ってましたが、W140はさぞかし重厚感・品質感は抜けているのでしょうね。

先月、W216を購入して、ベンツの乗り心地を楽しみにしてましたが、
往年の重厚さは無くなり、最近の国産高級車でもこれくらいのレベルにある、と
思って、期待はずれでした。

私もFelipe四世さんに倣って、旧車のベンツに乗りたいと思いました。
探せばまだ、程度の良い車はあるでしょうね。

meitei さんのコメント...

ノスタルジアの原義は存じませんでした。「古傷の痛み」なんですね。どうもノスタルジアは記憶を圧倒する力があるようで、「ノスタルジアは魅惑的な嘘をつく」と言う言葉もあるようです。

10年10万キロを乗ったW201(190E2.6)とかW124(後期型E280)には「郷愁」を感じますけど、あらためて現時点で乗ってみて、どんな感想を抱くのか自信がありません。

小ベンツ/CクラスだとW203世代がバランスが良く、もっとも好印象でしたが、これも歴代の車を同時に乗り比べると、また違う感想になるかも知れません。ベンツは世代を経るごとに「重厚」から「軽快」の方向になっている印象を受けますが、品質感も軽くなっているのかも知れませんね。

Felipe 四世 さんのコメント...

木村様、コメントありがとうございます。
かつて『最高のベンツは最良のベンツ』と言われましたが、これは半分正しく、半分は正しくないのでは無いかと思います。

私はベンツを新車で購入し、長期で使用した経験が無いので、それを論ずる資格はありませんが、やはり数世代のベンツを経験してみると、最新のベンツは素晴らしい反面、失ったものも少なくはないと思います。

久しぶりにW140に乗って感じた事は、『こんなに重々しい車だったっけ?』という事。性能そのものは大したことありませんが、ただひたすら重厚です。映画で言うと、昔の007と今の007の違いですかね。

W140は、まだまだ極上車がありますし、維持費も大した事ないので、オススメしますよ。
W216との二台持ちも良いかも。また、相棒には、最新のゴルフかマツダのデミオなんかが良いかもしれません。


Felipe 四世 さんのコメント...

Meiteiさま、
ノスタルジアは、単なる懐かしい思い出ではなく、切なさを含んでいる点が面白いです。

Meiteiさん世代ですと、日本車とドイツ車の間に圧倒的な差があり、特にベンツは別格の存在だったと思います。

当時、初めて190Eに乗った時の衝撃波は、凄まじいものであった事は、想像に難くありません。
しかし、2015年にもう一度乗りたいか、しかも日常的に使用して、またあのめんどくさいメンテナンスをするだけの値打ちがあるのか?

ましてや、過去に10年も乗って自分としては卒業したつもりでしたが、再び入手したのは単なるノスタルジーではないのです。

今回の私の140クーペの導入のテーマは、まさにそこであります。W215や760Liとは10年、一世代違いますが、どのみちどちらも中古車であることには変わりありません。これが現代の基準で日常的に使用可能か、またその満足度や維持コストの違いをあくまでも冷静かつフラットに評価していきたいと考えています。





gorgo_nk さんのコメント...

Felipe4世さま

相変わらず引き込まれる文章ですね!

当方の車両も94年式ですので何故か少し嫉妬心のようなものが出てきます(笑)

私はこの年代のドイツ車(メルセデス)は今回がはじめてですのでどの様な車両のレベルなのかよくわからないのですが、こんなものなんかな?と思いながら乗ってます。

一度当方の車両にも試乗くださり、今後の維持整備の参考の為にも忌憚のない感想をお聞きしたいものです。

Felipe 四世 さんのコメント...

Gorgoさま、もうW140は卒業したつもりでしたが、まだまだでした。
三月になれば、関西にてオフ会を企画したいですね。AMG S600Lは、ノーマルとはかなりフィーリングが違うので、私の経験と記憶で宜しければ、是非ともご協力致します。
それより、内装のクイックブライトでクリーニングをしたいですね(笑)

gorgo さんのコメント...

Felipe4世さま

ぜひオフ会でお願いします!

内装のクリーニングは以前から気になっておりまして、実は貴HPを拝見してから実行しようかと思ったことがありましたが、いかんせん知識及び経験値が無いものでビビってしまい結局は見送ってしまいました。。
こちらについてもアドバイス等を頂戴したく存じます<(_ _)>