昔から、日本車の性能の比較に用いられるのは、メルセデスやBMWといったドイツの高級車と相場は決まっている。
外国車、とりわけ高級ドイツ車は庶民にとっては高嶺の花であったと同時に、自動車評論家にとっては絶対的な価値観の尺度であった。そのなかでもメルセデスベンツとBMWは特別な存在であり、この両雄に対する尊敬と憧れは、単なる自動車評論に留まらず、文化論にまで到達しているのは流石ドイツ車と言うべきであろう。
しかし、今から20年以上も前に、このドイツの両雄に、車づくりのあり方を根本的に変える程の衝撃を与えた車が有る。
それはトヨタのセルシオである。
私自身、海外とりわけヨーロッパへのあこがれの延長で、20年もの間、自分なりにクルマ選びをしてきたが、日本車を保有した経験はあまりない。初めて新車で買った三菱ディアマンテ、ホンダビート、日産32型フェアレディZ、初代トヨタ・プリウス、日産シーマ(F50)など。。。
思い返せば、今でも名車として語り継がれているモデルにも乗ってきたなあと思う。しかし、心の中で、ずっと、セルシオの事が気になっていた。
そこで、業者オークション、ヤフオクなどで、20/21系の前期型に絞って、低走行、記録簿有りの物件を物色していたら、有りました、有りました。。。
山梨県、法人ワンオーナー、全記録簿付、ガレージ保管、備品など全て有りという理想的な物件が、、、
今回は、陸送会社に頼まずに、自分で仮ナンバーを取得して引き取ることにした。その理由は、引き取り場所が山梨の勝沼というワイナリーも多くある風光明媚な土地である事、そして横浜から「はまかいじ」という特急が出ている事、、そして何よりも、自分の目で早くこのセルシオを見て確かめたいという衝動からであった。
「勝沼ぶどう郷」の駅を下りたところ、、まるで欧州の田園風景のような素敵な眺めである。。
あいにく、震災の影響で、「はまかいじ」は運休になっており、横浜線で八王子まで小一時間乗ったあと、特急「あずさ」にて「勝沼ぶどう郷」まで向かう。
朝十時に勝沼に着くと、すでに駅には売主の方が迎えに来てくれていた。
車に乗せてもらい10分くらい走ると、売主さんのお宅である地元の大きな工務店に到着した。この車は、彼のおじさんの会社の名義だったが、昨年に伯父さんが他界された後、誰もこの車を欲しがらなかったので、昨年に抹消してからすっとガレージにしまいっぱなしだったようである。
しかし、こんな大きな車は邪魔になるし税金の無駄と言うので、試しにヤフオクに出品してみたところ、私が購入したというわけである。
売主さんのお兄さんが登場して、シャッターを開けてくれる。見かけはちょっといかついが、笑うと優しい顔になるナイスガイだ。
私も、過去何度もこういう場を経験しているが、この時のドキドキは言葉では上手く表現が出来ない。
このドキドキを味わいたいがために、中古車道をやめられないのであろう。
紺のツートーンという渋い(地味な)組み合わせです。外装の状態はすこぶる良い
うーん、しぶい
状態は、かなり良い。
ベージュのモケットが第一候補であるが、、、グレーも悪くは無い
シートは、ウール100%だとのこと。。
内装は非常に綺麗。
後席は使用した形跡が少ない。
タイアは納車以来、一回も替えていないとのこと。15年前のタイアなのだ。。
車両の状態、付属する記録簿、その他の付属物は完璧。全く文句なしのの取引であった。こんなに気持ちのいい取引は久しぶりだ。
では、ロードインプレションを少々、、、
実は、この20/21系セルシオを運転した事は、10年近く前に一回だけあるが、その時の印象はもう忘れてしまっている。
まず、静寂性に関しては、本当に素晴らしい。街中はおろか高速でも殆どエンジン音や走行音がしない。15年前の車だと考えると、これはちょっとした驚きである。
ボディ剛性、そしてシートの座りごこちなどは全く申し分ない。インテリアの質感は世界最高レベル。操作感がベンツなどとは比較にならないくらい精度が高い。こういうところがセルシオの真骨頂だろう。
では、肝心のロードインプレッションについては、なんせ15年前のタイアをいまだに装着しているのでコメントは出来ない。グリップ、NVH全てが問題外。タイアの接地感を殆ど伝えないのは、セルシオの特徴なのか、タイアの問題なのか、、、
普段、6000ccV12のようなハイパワーの車に乗っているせいで、セルシオのV8は非常におとなしく感じられる。また、ATのシフトもベンツのような節度感がないので、やや違和感を感じた。
今回は、タイアの問題もあるので、全て交換してから、インプレッションを書いてみようかと思う。