SZ系のロールス&ベントレーの宿命で、パワーシートのコントロールが必ず利かなくなる。その原因は、ECU内部の小さなバッテリーが液漏れを起こし、配線関係が駄目になってしまうのである。
今回難儀したのは、シートが動かないので、シート下に固定してある20cmサイズのECUが取れないのだ。インターネットを駆使しても、このECUのはずし方はどこにも載っていない。唯一、一台が何とか動いたので、シートレールを固定している5mmのトルクスを外してもらったが、相当堅かったようだ。今回の作業で奥崎工場長は、シートを前後左右にさすってみて、「これはここだけ外れますね」と見きわめ、背面側から下の隙間に布ベルトで固定しているフックを発見し、あっという間に座面を持ち上げて、ECUを取り外してしまった。
作業の留意点として、このECUにつながっているケーブル類が複雑にタイラップで固定されており、狭い場所に手を入れて、丁寧に外さなければならない。
私が昨年の秋から悪戦苦闘しているのに、たったの一時間で二台とも脱着完了。さすがプロの仕事である。プロにお願いするのは、技術を買うとともに時間を買うのだと痛感した。
ベントレーのECUのリペアの定番は、
英国の業者に本体を送ると、リペア済みのものが返送されてくる。日本円でおおよそ45000円もする。二台で4個だから税金や送料で20万円コースである。
そこで、色々と調べたところ、このECUは初代のレンジローバーと同じ部品であり、専門のリペア業者がいくつか存在するのだ。そのうちのひとつが、滋賀オーディオサービスさんである。
以下は、お見積もりのメールです。
4セット拝見させて頂きました、4台共両面基盤に腐食がかなり進んでいます、
1セットはリレー接点まで腐食して有りこのリレーは特殊ですので接点修正を考えております。
4台共両面プリント基盤パターン修正、ジャンパー修正、基盤腐食防止コーティングをします。
交換部品:ニッケル水素電池、電解コンデンサー3個、
セラミックコンデンサー3個、
コンパレータIC2個、ダイオード1個、抵抗2個交換になると思います。
(セットにより交換部品の数量が変化します。)
4台共改善修理を考えて降りますがかなり腐食が進んでます、当社では交換部品回路点検は出来ますが
車両装着通電TESTが出来ません、完了後お客様にTESTをお願いする事に成ります。
修理見積りですが、1セットで約工料12.000円+部品3.500円=15.500円
送料4セット一箱1.000円+消費税です。
例15.500円×4=62.000円+送料1.000円+消費税5.040円合計68.040円
では、具体的にどのようにリペアするのかを専門業者である滋賀オーディオサービスさんのブログから転載。
VARTA製電池の液漏れでプリント基板腐食誤動作、動作しない故障。電池とコンパレータICを外しますとほとんどこの様な状態になっています。
誤動作で別の回路まで故障が出る時も有ります、写真の腐食はまだ初期状態ですがかなりひどい状態も有ります。動作回路を確認してプリントパターンを修正不良部品交換、改善完了後基盤腐食防止コーティングをして完成。
20年以上前の英国車のECUを本国よりも高い修理技術とリーズナブルな修理費用でやってのける業者があることを知り驚いた。このような名も無い職人の持つ倫理観、が日本の底力なのではないか。